豚肉は、焼く、煮る、揚げるなど幅広い料理に使われますが、生や加熱不十分な状態では食べられません。
見た目が新鮮でも、病原体の有無を色やにおいだけで判断することはできないためです。
日本では2015年6月から、豚肉や豚レバーなどの内臓を生食用として販売・提供することが禁止されています。
表面を炙っただけの料理や、中心が十分に加熱されていない料理も避ける必要があります。
豚肉・豚レバーは、新鮮でも生や加熱不十分な状態で食べないでください。
細菌だけでなく、E型肝炎ウイルスや寄生虫などのリスクがあり、飲食店等での生食提供も禁止されています。
厚生労働省の規格では、豚肉を直接消費者へ提供する場合の加熱条件として中心63℃で30分以上、またはこれと同等以上が示されています。
家庭では温度管理を単純化するため、中心まで十分に加熱することを優先します。
「低温調理器を63℃に設定して30分」では不十分です。
肉の中心が63℃へ上がるまでの時間に加え、その後30分の保持が必要です。
豚肉はなぜ生で食べられない?
豚肉を生で食べられない理由は、一種類の菌だけではありません。
豚肉や豚の内臓には、細菌、ウイルス、寄生虫といった複数の危害要因が存在する可能性があります。病原体によっては肉の表面だけでなく、内部や内臓に存在する場合があります。

食中毒菌
豚などの家畜は、腸管内にサルモネラ属菌、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌などの病原性細菌を保有している場合があります。
と畜、解体、加工の工程で肉や内臓へ付着する可能性があるため、購入した肉の表面がきれいでも、病原体が付いていないとは判断できません。
ひき肉、成形肉、筋切り・針刺し加工された肉では、表面に付着した細菌が内部へ入り込む可能性があります。
E型肝炎ウイルス
豚やイノシシなどはE型肝炎ウイルスに感染している場合があり、豚レバーなどからウイルス遺伝子が検出された報告があります。
ウイルスを含む可能性がある肉や内臓を、生または加熱不十分な状態で食べると、人へ感染することがあります。
発熱、吐き気、腹痛、黄疸、肝機能の悪化などが起こり、妊娠中の人、高齢者、基礎疾患がある人などでは重症化に注意が必要です。
寄生虫
豚肉を介する寄生虫として、世界では有鉤条虫や旋毛虫などが知られています。
寄生虫は肉の内部に存在する場合があるため、表面だけを焼く、熱湯へ短時間くぐらせるといった方法では十分な対策になりません。
表面加熱だけでは安全になりません
炙り、たたき、レア、半生など、中心が十分に加熱されていない豚肉は食べないでください。レバーやハツなどの内臓も同様です。
新鮮な豚肉なら生で食べられる?
新鮮さと、生食できるかどうかは別の問題です。
病原体は肉の色、におい、つや、弾力だけでは確認できません。
購入したばかりの肉、冷蔵状態が良い肉、専門店や生産者から購入した肉であっても、生食用として安全になるわけではありません。
「ブランド豚だから安全」「解体したばかりだから大丈夫」「少量なら問題ない」といった判断は避け、中心まで十分に加熱します。
豚肉・豚レバーの生食提供は禁止されている
日本では2015年6月12日から、飲食店や販売店が豚肉や豚レバーなどの内臓を、生食用として販売・提供することが禁止されています。
販売者や飲食店は、消費者が加熱して食べることを前提として提供し、中心まで加熱する必要がある旨を案内します。
牛肉の一部と同じ扱いではありません
牛肉には規格基準を満たした生食用食肉がありますが、豚肉には生食用として提供できる同様の制度はありません。牛肉のたたきやユッケの感覚で豚肉を判断しないでください。
豚肉を安全に食べる加熱条件
家庭で分かりやすく確認できる目安は、肉の中心部を75℃で1分以上加熱することです。
厚生労働省は、豚肉の加熱条件として、中心部を63℃で30分以上加熱する方法や、それと同等以上の殺菌効果を持つ方法も示しています。

| 肉の中心温度 | 中心到達後の保持時間 | 家庭での考え方 |
|---|---|---|
| 75℃ | 1分以上 | 一般家庭で確認しやすい目安 |
| 70℃ | 3分以上 | 中心温度の正確な管理が必要 |
| 69℃ | 4分以上 | 中心温度の正確な管理が必要 |
| 68℃ | 5分以上 | 中心温度の正確な管理が必要 |
| 67℃ | 8分以上 | 中心温度の正確な管理が必要 |
| 66℃ | 11分以上 | 中心温度の正確な管理が必要 |
| 65℃ | 15分以上 | 中心温度の正確な管理が必要 |
| 63℃ | 30分以上 | 豚肉の基準例。家庭では管理が難しい |
時間は「中心がその温度へ達した後」から数えます
低温調理器を65℃に設定して15分加熱すればよい、という意味ではありません。肉の中心が65℃へ達するまでの昇温時間に加え、到達後15分以上の保持が必要です。
63℃で30分と75℃で1分の違い
63℃へ達した瞬間に加熱完了ではなく、肉の中心が63℃以上になった状態を30分以上保つ必要があります。
家庭のフライパン、鍋、オーブンでは、中心温度を低温で一定に保つことが難しいため、通常の加熱調理では75℃で1分以上を目安にするほうが確認しやすくなります。
焼き色や肉汁だけで判断できる?
肉の色はミオグロビン、pH、調理条件などでも変わります。
表面に焼き色が付き、中心が白っぽく見えても、温度と時間を満たした証拠にはなりません。
反対に、加熱条件を満たしていても薄いピンク色が残る場合があります。
表面に濃い焼き色が付いていても、厚い肉の中心が十分に加熱されていない場合があります。
反対に、中心が少しピンク色に見えても、温度と時間の条件を満たしていることがあります。肉の色は部位、pH、塩分、調味料、保存状態などでも変化するためです。

肉汁の色は補助的な目安
厚生労働省の一般向け案内では、肉汁が透明になり、中心の色が白っぽく変化することが加熱の目安として示されています。
ただし、肉汁と色だけでは温度と保持時間を正確に確認できません。厚い肉、かたまり肉、ひき肉料理では食品用温度計を使うと確実です。
食品用温度計の使い方
温度計の先端を、肉の最も厚い部分の中心へ刺します。
- 骨付き肉では骨に先端を触れさせない
- 脂身だけの部分を避ける
- フライパンや天板へ先端を接触させない
- 厚さが異なる肉を複数調理するときは、厚いものも測る
- 使用前後に温度計の先端を洗浄する
薄切り肉を測る場合
薄切り肉は温度計を横から差し込むか、同じ厚さの肉を複数枚重ねて中心を測る方法があります。
ただし、薄切り肉を重ねた肉巻き、ミルフィーユカツ、ロール状の料理では、重なった中心部へ熱が届くまで時間がかかります。外側の色だけで判断しないでください。
電子レンジ・低温調理で加熱するときの注意
電子レンジは、肉の厚さ、形、置く位置、容器によって加熱むらが起こります。
途中で上下を返す、位置を入れ替える、厚みをそろえる、加熱後に表示された時間だけ蒸らすなど、使用する機器とレシピの手順に従います。
加熱後は複数箇所を確認し、冷たい部分が残っている場合は追加加熱します。
「ワット数×分数」だけで安全を断定しない
同じ600Wでも、肉の重量、冷蔵・冷凍状態、容器、ターンテーブルの有無で中心温度は変わります。最も厚い部分を温度計で確認してください。
低温調理器を使う場合
低温調理では、設定温度、肉の厚さ、重量、初期温度、袋の密着状態、湯の循環、機器の精度が安全性へ影響します。
肉を湯へ入れた時点では、中心温度は冷たいままです。湯から熱が伝わって中心が目標温度へ達するまでの時間と、到達後に保持する時間を分けて考えます。
自己流で温度や時間を下げない
使用する低温調理器メーカーや公的機関が示す、肉の種類・厚さ・重量を含めて検証された手順を守ってください。
途中で停電した、袋が浮いた、中心温度を確認できない場合は安全性を判断できません。
豚肉を安全に調理する4つの手順

1.購入後は早く冷蔵する
豚肉は購入後できるだけ早く冷蔵庫へ入れ、パッケージに記載された保存温度と期限を守ります。
持ち帰るときは保冷剤や保冷バッグを使い、肉汁がほかの食品へ付かないようポリ袋や密閉容器へ入れます。
2.生肉用の器具を分ける
生肉に使った包丁、まな板、皿、箸、トングには病原体が付着している可能性があります。
そのまま食べる野菜、加熱後の肉、調理済み食品へ使い回さないでください。焼肉や鍋料理では、生肉を取るトングと、食べる箸を分けます。
3.最も厚い部分まで加熱する
肉の表面ではなく、最も厚い部分の中心まで加熱します。
特に、ひき肉、成形肉、筋切り・針刺し処理された肉、肉巻き、詰め物をした料理は、病原体が内部へ入り込む可能性があるため注意が必要です。
4.手と器具を洗う
生肉へ触れた後は、石けんを使って手を洗います。
包丁、まな板、トング、皿は洗剤でよく洗い、器具の材質に合う方法で熱湯や台所用漂白剤などを使用します。
冷しゃぶを安全に作るポイント
冷しゃぶは薄切り肉を湯へ入れるため火が通りやすい料理ですが、短時間くぐらせるだけでは十分でない場合があります。
- 肉を一度に大量に入れて湯温を急激に下げない
- 肉同士の重なりをほぐす
- 中心まで色が変わるよう加熱する
- 加熱前の肉を載せた皿へ戻さない
- 清潔な箸やトングで取り出す
- 加熱後は早く食べるか冷蔵する
氷水へ取る場合も、氷水で加熱不足を補うことはできません。湯の中で十分に加熱してから冷やします。
ひき肉料理・餃子・ハンバーグの注意
ひき肉は、肉の表面に付着していた病原体が、加工時に内部全体へ広がる可能性があります。
餃子、焼売、ハンバーグ、肉団子、つくねなどは、外側が焼けていても中心が生の場合があります。最も厚い部分を確認し、中心まで十分に加熱します。
豚肉をゆでたときに出る白い泡と安全性の関係は「豚肉をゆでると出る白い泡は何?」で解説しています。
加熱前の肉だねを味見しない
調味料を確認するためでも、生の餃子の具、ハンバーグだね、肉みそなどを口にしてはいけません。味付けは肉を加える前に確認するか、少量を十分に加熱してから味見します。
冷凍すれば生で食べられる?
家庭用冷凍庫で冷凍しても、豚肉を生で安全に食べられるようにはなりません。
冷凍によって一部の微生物や寄生虫へ影響が出る場合はありますが、すべての細菌、ウイルス、寄生虫を確実に除去できる方法ではありません。
冷凍した豚肉も、解凍後に中心まで十分に加熱します。室温で長時間解凍せず、冷蔵庫、電子レンジの解凍機能など、商品や機器の案内に従います。
市販の生ハム・ハム・ベーコンとの違い
市販の生ハム、ハム、ベーコン、ソーセージなどは、食品衛生法の規格基準に従って製造された食肉製品です。
「加熱食肉製品」「非加熱食肉製品」「乾燥食肉製品」など、製造方法に応じた区分があります。非加熱食肉製品は、家庭で生の豚肉へ塩を振って乾燥させただけのものとは異なります。
市販品は「そのままお召し上がりいただけます」「加熱してお召し上がりください」などの表示を確認し、保存方法と期限を守ります。
家庭で生ハムを自己流に作らない
塩漬け、乾燥、燻製だけで安全性を判断することはできません。生食できる食肉製品は、衛生管理と規格基準に基づいて製造された市販品を選びます。
よくある疑問
表面を炙れば生で食べられますか?
食べられません。E型肝炎ウイルスや寄生虫などが肉の内部や内臓に存在する可能性があるため、表面だけの加熱では不十分です。
冷凍した豚肉なら生で食べられますか?
食べられません。家庭での冷凍によって、すべての細菌、ウイルス、寄生虫を確実に除去できるわけではありません。解凍後も中心まで加熱してください。
中心が少しピンク色なら加熱不足ですか?
肉の色と加熱状態を分けて考える例は「鶏肉が焼いても赤い・ピンクなのは大丈夫?」も参考になります。
色だけでは断定できません。ピンク色でも加熱条件を満たしている場合があり、白く見えても中心温度が不十分な場合があります。食品用温度計で最も厚い部分を確認する方法が確実です。
低温調理器を63℃に設定して30分加熱すれば安全ですか?
安全とは限りません。30分は、肉の中心が63℃へ達した後に保持する時間です。中心へ熱が届くまでの昇温時間が別に必要で、肉の厚さ、初期温度、機器の性能によって変わります。
市販の生ハムはなぜ加熱せず食べられるのですか?
市販の生ハムは、非加熱食肉製品などの規格基準と衛生管理に従って製造されています。家庭で生の豚肉へ塩を振り、乾燥させたものとは異なります。商品の保存方法と表示に従ってください。
まとめ
- 豚肉や豚の内臓は、生食用として販売・提供できない
- 新鮮さ、ブランド、色、においでは安全性を判断できない
- E型肝炎ウイルス、食中毒菌、寄生虫のリスクがある
- 家庭では中心75℃で1分以上を目安に加熱する
- 63℃で加熱する場合は、中心到達後30分以上保つ
- 低温ほど必要な保持時間が長くなる
- 表面の焼き色や肉汁だけでなく、最も厚い部分の中心温度を確認する
- 電子レンジ、冷しゃぶ、肉巻き、ひき肉料理は加熱むらに注意する
- 生肉用と加熱後用の箸・トング・皿を分ける
- 冷凍しても生食できるようにはならない
- 市販の生ハムは、規格基準に従って製造された食肉製品
豚肉を安全に食べるために重要なのは、見た目や新鮮さを信用することではなく、最も厚い部分の中心温度と保持時間を確認し、調理中の交差汚染を防ぐことです。
参考・確認先
編集・確認:食のハッケン帳編集部
情報確認日:2026年9月1日
この記事の確認について
豚肉・豚内臓の生食提供が禁止されている理由、E型肝炎ウイルス・細菌・寄生虫などのリスク、食肉販売・提供時の63℃30分または同等条件、家庭での十分加熱、低温調理で中心温度到達後に保持時間が必要なことを確認しています。
- 厚生労働省「豚の食肉等の生食に関するQ&A」
- 農林水産省「お肉はよく焼いて食べよう」
- 厚生労働省「E型肝炎Q&A」
- 厚生労働省「豚のお肉や内臓を生食するのは、やめましょう」
- 農林水産省「E型肝炎ウイルス」
※63℃30分は肉を63℃の湯へ入れてから30分という意味ではありません。食品中心部が63℃に達した後の保持時間です。












