ケチャップライスを黄色い卵で包んだオムライスは、洋食店や喫茶店、家庭の食卓まで幅広く親しまれている日本の定番料理です。
外国風の名前と見た目から、ヨーロッパで生まれた料理だと思われることもありますが、現在一般的なオムライスは日本で発達した洋食です。
その発祥を調べると、大阪の「北極星」と東京・銀座の「煉瓦亭」という二つの店が登場します。
「結局、どちらが発祥なの?」「オムライスという名前を付けたのはどちら?」「昔からケチャップライスを薄焼き卵で包んでいた?」と疑問に感じる人も多いでしょう。
結論からいうと、オムライスの起源は一つの出来事だけで説明するより、東京で生まれた卵とご飯を組み合わせる原型と、大阪で誕生した現在の包むスタイル・名称を分けて理解するのが分かりやすいです。
この記事では、二つの有力な発祥説、名前の由来、昔と今の違い、全国へ広がった背景まで詳しく解説します。
東京・煉瓦亭は1900年前後に「ライスオムレツ」という卵とご飯を合わせた料理を提供した原型の有力説、大阪・北極星は1925年にケチャップライスを薄焼き卵で包む現在型と「オムライス」という名称を生んだ有力説として知られています。
発祥には複数の資料と店側の伝承があり、どちらか一方だけを唯一の起源と断定するのは難しいものの、二つの店が日本のオムライス史で重要な役割を果たしたことは共通しています。
オムライスは日本で生まれた洋食
オムライスは、海外の料理をそのまま再現したものではなく、西洋料理のオムレツと、日本で主食として食べられてきた米を組み合わせて発達した和製洋食です。
国立国会図書館のレファレンス協同データベースでは、オムライスは日本独自の料理であり、発祥の有力な店として東京・銀座の煉瓦亭と大阪・心斎橋の北極星が紹介されています。
また、「オムライス」という語は、フランス語由来の「オムレツ」と英語の「ライス」を組み合わせた和製語とされています。
現在では卵でケチャップライスを包む料理を想像しますが、初期の卵とご飯の料理は、現在の形と同じではありませんでした。この違いが、発祥説が二つ存在する理由につながります。

大阪・北極星の発祥説|現在型のオムライス
政府広報の「Highlighting Japan」が2025年に掲載した北極星への取材記事によると、北極星の前身「パンヤの食堂」は1922年に大阪で創業しました。
1925年、胃の調子が悪く、いつもオムレツと白いご飯を注文していた常連客に対し、創業者の北橋茂男氏が「毎日同じものではかわいそうだ」と考え、ケチャップライスを薄焼き卵で包んだ料理を提供したと伝えられています。
客から料理名を尋ねられた際、北橋氏が「オムレツとライスを合わせてオムライス」と答えたというのが、北極星に伝わる誕生物語です。
現在のオムライスに近い形
北極星説の重要な点は、味の付いたご飯を薄焼き卵で包むという、現在のオムライスへ直接つながる形であることです。
当初はケチャップライスを卵1個で包み、ケチャップをかけたシンプルな料理だったとされ、その後改良が重ねられました。
「人へのやさしさ」から生まれた料理
豪華な新メニューを開発するためではなく、常連客の体調と食べやすさを考えて作られたという物語も、北極星説が広く知られる理由です。
卵でご飯を包むことで口当たりがやわらかくなり、一皿で食べやすい料理になりました。

東京・煉瓦亭の発祥説|卵とご飯を合わせた原型
もう一つの有力な説が、東京・銀座の洋食店「煉瓦亭」です。
国立国会図書館のレファレンス協同データベースが紹介する資料では、煉瓦亭では1900年頃から、忙しい調理場で働く料理人のまかないとして、卵とご飯を一緒に調理する料理が作られていたとされています。
鍋を動かしながら片手でスプーンを使って食べられるよう、ご飯と溶き卵、具材を混ぜて焼いた料理だったとされます。
その様子を見た客が食べたいと注文したことから、「ライスオムレツ」という名称でメニュー化されたという伝承です。
薄焼き卵で包む料理ではなかった
煉瓦亭のライスオムレツは、現在のように完成したケチャップライスを薄焼き卵で包む形ではなく、卵とご飯を混ぜて調理するタイプでした。
そのため、煉瓦亭を「卵とご飯を組み合わせたオムライスの原型」、北極星を「現在一般的な包むオムライスの発祥」と整理すると、二つの説の違いを理解しやすくなります。
年代は資料によってわずかに異なる
煉瓦亭の料理がまかないとして作られた時期や、メニューに載った年については、1900年、1901年、1902年など資料によって記載に差があります。
このため、記事では一つの年だけを絶対的な事実として断定せず、「1900年前後」と捉えるのが適切です。
大阪と東京の発祥説・名前・年代を整理
| 比較項目 | 東京・煉瓦亭 | 大阪・北極星 |
|---|---|---|
| 時期 | 1900年前後 | 1925年 |
| 料理名 | ライスオムレツ | オムライス |
| 形 | 卵とご飯を混ぜて焼く | ケチャップライスを薄焼き卵で包む |
| 誕生の背景 | 忙しい調理場のまかない | 体調の悪い常連客への配慮 |
| 歴史上の位置付け | 卵とご飯を合わせる原型 | 現在型と名称の有力な発祥説 |
「どちらが先か」だけを見ると煉瓦亭ですが、両店の料理は形も名称も異なります。食文化は一つの店で突然完成するだけでなく、複数の料理や工夫が重なって定着することがあります。
オムライスの場合も、煉瓦亭が卵とご飯を一体化させる発想を早期に商品化し、北極星が現在へ続く包むスタイルと名称を広めたと考えれば、二つの発祥説は必ずしも矛盾しません。

「オムライス」という名前の由来
オムライスは、「オムレツ」と「ライス」を組み合わせた和製語です。英語圏やフランスで古くから使われてきた正式な料理名ではありません。
「オムレツ」はフランス語の omelette に由来し、「ライス」は英語の rice です。異なる言語の単語を日本で短く組み合わせ、料理名にした点も、和製洋食らしい特徴です。
誰が最初に「オムライス」と呼んだのか
北極星では、1925年に創業者が「オムレツとライスを合わせてオムライス」と名付けたと伝えられています。
一方、言葉の使用時期や広まり方を厳密に証明する資料は限られています。
国立国会図書館のレファレンス事例では、1931年の文献に「オムライス」という語の使用例が確認できるとされています。
少なくとも昭和初期には、料理名として社会に定着し始めていたことが分かります。

昔と今の違い・全国へ広がった理由
昔ながらは薄焼き卵で包む
昭和の洋食店や喫茶店で定番となったのは、ケチャップ味のチキンライスを薄焼き卵で包み、上からケチャップをかけるスタイルです。
卵を完全に固めて破れにくくし、木の葉形やラグビーボール形に整えるのが特徴です。材料が身近で冷めても味が分かりやすく、家庭や弁当にも取り入れやすい料理でした。
今どきはふわとろ・半熟が人気
現代では、半熟のオムレツをチキンライスにのせて切り開くタイプ、ふわふわの卵をかぶせるタイプ、デミグラスソースやホワイトソースをかけるタイプなど、多様なオムライスがあります。
見た目の華やかさ、卵の食感、ソースとの組み合わせが重視され、専門店やカフェでは独自性のあるメニューが作られています。
進化しても基本は「卵+味付きご飯」
形やソースが変わっても、卵とご飯を一皿で楽しむという基本は共通しています。この分かりやすい組み合わせが、時代ごとの流行を受け入れながら長く残った理由の一つです。

オムライスが全国へ広がった理由
洋食店と喫茶店の定番になった
明治から昭和にかけて、日本ではカレーライス、コロッケ、カツレツなど、日本人の味覚に合わせた洋食が発達しました。
オムライスもその一つとして洋食店のメニューに加わり、のちに喫茶店や大衆食堂へ広がりました。
黄色い卵と赤いケチャップの見た目は印象的で、料理名から内容を想像しやすいため、幅広い客層に受け入れられました。
ケチャップの普及で家庭でも作りやすくなった
農林水産省の明治期以降の食品産業に関する解説では、ケチャップを使うオムライスやチキンライスが家庭料理として広く普及したのは昭和になってからとされています。
ケチャップはトマトソースを一から煮込まなくても甘み・酸味・色を付けられるため、家庭で洋食らしい味を再現するのに便利でした。
残りご飯、卵、玉ねぎ、鶏肉やハムなど、身近な材料で作れることも普及を後押ししました。
子どもにも食べやすい味だった
ケチャップの甘酸っぱさと卵のまろやかさは、香辛料の強い料理が苦手な子どもにも食べやすい組み合わせです。
旗を立てたお子様ランチや家庭の誕生日料理などにも使われ、楽しい洋食というイメージが定着しました。
アレンジの幅が広い
中のご飯をバターライスやピラフに変えたり、ソースをデミグラス・カレー・クリームへ変えたりできるため、店や家庭ごとに工夫できます。
基本形が分かりやすい一方で自由度が高いことが、長く愛される理由です。
発祥店の料理と一般的なオムライスは同じ?
発祥店として知られる料理が、現在全国で食べられているオムライスと完全に同じとは限りません。
煉瓦亭の「元祖オムライス」は、ご飯と卵、ひき肉などを混ぜて焼くため、薄焼き卵で包む一般的な型とは異なります。
北極星の料理は包む型に近いものの、ソース、卵の厚さ、味付けは改良されてきました。
発祥を知るときは、現在の見慣れた一皿を過去へそのまま当てはめず、「原型が生まれ、名称や形が整い、全国で変化した」と捉えることが重要です。
日本で発達した洋食の流れを続けて知りたい場合は「ナポリタンはなぜ日本生まれ?」「コロッケはなぜ日本の定番洋食?」もあわせて確認できます。
よくある疑問
オムライスの発祥は大阪と東京のどちらですか?
卵とご飯を一緒に調理する原型は東京・煉瓦亭、ケチャップライスを薄焼き卵で包む現在型と名称は大阪・北極星という説が有力です。料理の形が異なるため、役割を分けて理解するのが適切です。
オムライスは外国の料理ですか?
オムレツなど西洋料理の影響を受けていますが、米と組み合わせて発達した日本独自の洋食です。
「オムライス」は英語で通じますか?
日本食として「omurice」の名称が海外でも知られるようになっていますが、もともとは日本で作られた和製語です。説明する場合は「rice wrapped in an omelet」などを添えると伝わりやすくなります。
最初からケチャップを使っていましたか?
北極星に伝わる1925年の料理はケチャップライスを卵で包むものでした。一方、煉瓦亭の初期のライスオムレツは現在のケチャップライスを包む料理とは異なります。
ふわとろオムライスは昔からありましたか?
昔ながらの定番は、しっかり焼いた薄焼き卵でご飯を包む型です。半熟卵をかぶせる、切り開くなどのふわとろ型は、その後に発達したアレンジです。
まとめ
- オムライスは日本で発達した和製洋食
- 発祥の有力説には東京・煉瓦亭と大阪・北極星がある
- 煉瓦亭では1900年前後に「ライスオムレツ」が作られた
- 煉瓦亭の料理は卵とご飯を混ぜて焼く原型
- 北極星では1925年にケチャップライスを薄焼き卵で包んだ
- 北極星は「オムライス」という名称の有力な発祥説でもある
- 二つの説は原型と現在型として両立すると考えられる
- オムライスは「オムレツ」と「ライス」を組み合わせた和製語
- 昭和期にケチャップが普及し、家庭料理として広がった
- 薄焼き卵型からふわとろ型まで時代とともに進化した
オムライスの歴史は、「一つの店が完成品を突然発明した」という単純な物語ではありません。
東京で卵とご飯を合わせる原型が生まれ、大阪で現在に近い包む形と名称が誕生し、洋食店・喫茶店・家庭でさまざまに発展しました。
二つの発祥説を知ることで、身近なオムライスが日本の洋食文化を象徴する一皿であることが見えてきます。
参考・確認先
編集・確認:食のハッケン帳編集部
情報確認日:2026年9月1日
この記事の確認について
オムライスの起源について、東京・煉瓦亭と大阪・北極星が有力な発祥店として挙げられること、両店で伝わる料理の形と年代が異なることを確認しています。唯一の「完成形の発明店」と断定せず、原型・名称・現在型の違いを分けて記載しています。
- 政府広報オンライン「店主の優しさから生まれた『オムライス』」
- 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「オムライスの起源について」
- 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「オムライスとオムレツを日本で最初にメニューとして出したレストラン」
- 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「オムライスの起源について調べたい」
- 農林水産省「家庭料理として洋食の普及」
※発祥史は店側の伝承と文献紹介が混在するため、複数説があることを明記し、確認できる範囲を超えて断定していません。












