コロッケはなぜ日本の定番洋食?クロケットから広まった歴史と名前の由来

コロッケはなぜ日本の定番洋食になったのかを問いかけるレトロ調アイキャッチ 食の歴史・由来

外はサクサク、中はほくほく。じゃがいもとひき肉、玉ねぎを合わせたコロッケは、洋食店だけでなく、家庭の食卓、精肉店、スーパー、弁当店、学校給食まで幅広く親しまれています。

現在ではあまりにも身近なため、日本で昔から食べられてきた料理のようにも感じられます。
しかし、コロッケのルーツとして挙げられるのは、フランス料理の「クロケット」です。
それでは、なぜ日本ではクリーム系のクロケットではなく、じゃがいもを使ったコロッケが定番になったのでしょうか。

結論からいうと、フランスのクロケットを手本にしながら、当時の日本で手に入りやすかったじゃがいもを使い、白いご飯に合うおかずへ作り替えられたからです。
その後、料理本や雑誌、流行歌、洋食店、学校給食、冷凍食品、惣菜販売など複数の経路を通して、特別な西洋料理から毎日の家庭料理へ変わりました。

この記事では、クロケットからコロッケへ変化した流れ、「コロッケ」という名前の由来、明治・大正・昭和に広がった背景、現在も定番として愛される理由まで詳しく解説します。

先出し解決

日本のコロッケは、19世紀末ごろに伝わったフランス料理のクロケットを基に、日本独自に発達した洋食です。

フランスのクロケットにはベシャメルソースを使うものがありますが、当時の日本では乳製品の加工技術が十分に普及していなかったため、じゃがいもを使う形が考案されたとされています。1895年には家庭向けのレシピが紹介され、1917年の「コロッケの唄」の流行や、大正期の洋食人気、戦後の給食・冷凍食品・惣菜販売によって全国へ定着しました。

フランスのクロケットが明治時代に日本へ伝わり、日本のコロッケへ変化した流れを示した図
ヨーロッパの揚げ物をそのまま再現するのではなく、日本の材料と食文化に合わせて独自に発達しました。

クロケットから日本のコロッケへ

日本のコロッケの起源には諸説ありますが、有力なルーツとして挙げられるのが、フランス料理の前菜「クロケット(croquette)」です。

クロケットは、細かくした肉や魚、ベシャメルソースなどをまとめ、衣を付けて揚げる料理です。
現在の日本でいえば、じゃがいもコロッケよりも、クリームコロッケに近いものを想像すると分かりやすいでしょう。

農林水産省は、日本のコロッケについて、文明開化の時代にフランスとイギリスの食文化から影響を受け、フランスのクロケットを由来としながら、日本独自のじゃがいもコロッケが誕生したと紹介しています。

西洋料理として19世紀末ごろに伝わった

1854年以降、日本と欧米諸国の交流が進むと、西洋の料理・調理器具・食事作法が急速に入ってきました。
ホテルや西洋料理店では、肉料理、ソース料理、揚げ物など、当時の日本人には新しい料理が提供されます。

コロッケのもとになったクロケットも、このような西洋料理の一つとして、19世紀末ごろまでに日本へ伝わったと考えられています。
ただし、最初から庶民の日常食だったわけではありません。
乳製品や肉、油を多く使う料理は高価で、西洋料理店を利用できる一部の人が味わう特別な料理でした。

クロケットと日本のコロッケは同じもの?

比較項目 フランスのクロケット 日本の一般的なコロッケ
主な中身 ベシャメルソース、肉、魚介など つぶしたじゃがいも、ひき肉、玉ねぎ
食感 中身がなめらかでクリーミー ほくほくして食べごたえがある
位置付け 前菜・軽食など 白いご飯に合うおかず・惣菜
広がり方 西洋料理の一品 家庭・精肉店・給食・冷凍食品へ普及

どちらも中身をまとめ、パン粉などの衣を付けて揚げるという基本は共通します。しかし、日本の定番であるじゃがいもコロッケは、クロケットを完全に再現した料理ではありません。

外国の料理を手本にしつつ、日本で入手しやすい材料、日本人が慣れ親しんだ主食、家庭で作れる調理法へ変えたことで、別の料理として定着しました。
この変化こそ、和製洋食の大きな特徴です。

日本でじゃがいもコロッケが定着した理由を身近な材料、作りやすさ、ご飯との相性から示した図
手に入りやすいじゃがいもを使い、家庭で作りやすく、ご飯にも合う形へ変わったことが普及を支えました。

なぜじゃがいもコロッケになった?

乳製品の加工が十分に普及していなかった

政府広報の解説では、フランスのクロケットにはベシャメルソースが使われる一方、当時の日本では乳製品の加工技術が十分に発達していなかったため、クリームソースの代わりにじゃがいもを使う形が考案されたと紹介されています。

牛乳、バター、小麦粉を使って安定したクリームを作るより、ゆでたじゃがいもをつぶして形を整えるほうが、当時の日本では作りやすかったと考えられます。

じゃがいもは中身をまとめやすい

加熱したじゃがいもは、つぶすと粘りが出て、ひき肉や玉ねぎをまとめやすくなります。冷ますと成形しやすく、衣を付けて揚げても崩れにくいため、家庭で作る揚げ物に向いています。

じゃがいも自体にボリュームがあり、少量の肉でも満足感のある一品にできます。材料費を抑えながら家族分を作りやすい点も、大衆化した理由の一つです。

白いご飯のおかずに合った

日本では、洋食も米飯と一緒に食べられる形へ変化しました。
ほくほくしたじゃがいもと肉のうま味、揚げたパン粉の香ばしさ、ソースの甘酸っぱさは、白いご飯と合わせやすい組み合わせです。

明治末から大正期にかけては、西洋料理を米飯に合うよう変化させた「洋食」が発達しました。
農林水産省は、とんかつ・コロッケ・カレーライスが当時の三大洋食と呼ばれたと説明しています。

1895年・名前の由来から分かる家庭化

政府広報が日本コロッケ協会会長への取材を基に紹介した内容では、1895年に発売された女性向け雑誌において、「クリームコロッケ=西洋のクロケット」「コロッケ=ポテトコロッケ」と区別し、じゃがいもを使うコロッケが大衆向けレシピとして掲載されていたとされています。

この時点で、外国料理のクロケットと、日本で独自に発達したポテトコロッケが別の料理として認識され始めていたことが分かります。

女子教育と料理本も洋食の家庭化を後押し

明治時代には高等女学校の家事科や、女子大学の前身となる教育機関で調理実習が行われるようになりました。
料理本・新聞・雑誌にも洋食の作り方が掲載され、西洋料理店で食べるだけだった料理を家庭で再現する環境が整っていきます。

コロッケは、材料を日本の家庭向けに置き換えやすかったため、このような料理教育やメディアとも相性が良い料理でした。

フランス語のcroquetteがクロケットを経て日本語のコロッケとして定着した流れを示した図
フランス語の料理名が日本人に発音しやすい形へ変わり、「コロッケ」として定着したと考えられています。

「コロッケ」という名前の由来

「コロッケ」は、フランス語の料理名 croquette(クロケット)が日本語化した名称と考えられています。

国立国会図書館のレファレンス協同データベースでは、クロケットという言葉が変化し、日本人が言いやすい「コロッケ」になったという資料が紹介されています。

外国語が日本へ入ったとき、元の発音がそのまま残るとは限りません。
音を聞き取りやすく、発音しやすいカタカナへ置き換える過程で、「クロケット」が「コロッケ」へ変化し、料理そのものの日本独自化とともに名称も定着しました。

「クリームコロッケ」と区別されるようになった

現在の日本では、「コロッケ」とだけいえば、じゃがいもを使ったポテトコロッケを指すことが一般的です。
一方、ベシャメルソースを使うタイプは「クリームコロッケ」「カニクリームコロッケ」などと呼び分けられます。

つまり、フランスのクロケットに近いタイプが説明付きの名称となり、日本独自のポテト型が無印の「コロッケ」になったことからも、じゃがいもコロッケが日本の標準として定着したことが分かります。

コロッケが明治の洋食から大正の大衆食、昭和の家庭料理、現在の定番惣菜へ広がった流れを示した図
洋食店の料理から、大衆食・家庭料理・学校給食・惣菜へと、時代ごとに食べる場が広がりました。

明治・大正・昭和に広がった歴史

明治|西洋料理店の特別な料理

明治初期の西洋料理は、主にホテルや専門店で提供される高価な料理でした。
東京では1870年に築地精養軒ホテルで西洋料理が提供され、その後、明治30年ごろには西洋料理店が増えたと農林水産省は紹介しています。

当初は一部の階層がハレの日に食べる料理でしたが、明治中期以降、料理本・学校教育・飲食店の増加によって庶民にも知られるようになりました。

大正|三大洋食として大衆化

大正期には、コロッケはとんかつ・カレーライスと並ぶ三大洋食と呼ばれるほど人気になりました。
都市人口が増え、洋風の一品料理と米飯を一緒に提供する食堂スタイルが定着したことも、コロッケの普及を後押ししました。

1917年には「コロッケの唄」というコミックソングが大流行し、コロッケの名前と存在が全国へ知られるきっかけになったとされています。
歌になるほど身近で話題性のある料理になっていたのです。

昭和|家庭のおかずと学校給食へ

家庭の台所設備が整い、油を使う揚げ物を作りやすくなると、コロッケは家庭料理としても普及しました。戦後は学校給食の洋風献立にも登場し、子どもの頃から親しむ味になります。

政府広報によると、1953年には学校給食用の冷凍コロッケが開発され、大量生産の需要が伸びました。
家庭で一から作るだけでなく、調理済み・冷凍の商品を購入して食べるスタイルが広がります。

現在|家庭・惣菜・専門店・ご当地メニューへ

現在のコロッケは、家庭で作られるだけでなく、精肉店、スーパー、コンビニ、弁当店、冷凍食品、定食屋、洋食店など、さまざまな場所で販売されています。

北海道のじゃがいも、かぼちゃ、枝豆、カニ、牛肉など、地域の食材を使うご当地コロッケも多く、地域の魅力を伝える料理としても活用されています。

コロッケが買いやすい、おかずになる、種類が豊富という定番洋食になった理由を示した図
作る料理であると同時に、手軽に買える惣菜になったことが、長く日常食として残った大きな理由です。

定番になった理由と現在の種類

1.身近な材料で作れる

基本材料はじゃがいも、玉ねぎ、ひき肉、卵、小麦粉、パン粉です。特別なソースや珍しい香辛料がなくても、家庭にある調味料で味を整えられます。

2.少ない肉でも満足感がある

じゃがいもを主材料にするため、肉の量が少なくてもボリュームがあります。家族分を作りやすく、食費を調整しやすい料理です。

3.白いご飯と相性が良い

揚げた衣の香ばしさ、じゃがいもの甘み、ひき肉のうま味、ソースの味がご飯によく合います。洋食でありながら、日本の一汁三菜型の食卓にもおかずとして取り入れられます。

4.買ってすぐ食べられる

精肉店の店頭で揚げたてを買う、スーパーの惣菜を夕食へ追加する、冷凍食品を弁当に使うなど、調理時間に合わせて選べます。

「家庭料理として作る」と「惣菜として買う」の両方が定着したことで、忙しい生活の中でも残り続けました。

5.アレンジの幅が広い

かぼちゃ、さつまいも、里芋、枝豆、チーズ、カレー、肉じゃが、魚介、カニクリームなど、さまざまな中身に変えられます。

地域の特産品や余った料理を活用できるため、家庭・飲食店・食品メーカーが新しい種類を作りやすい料理です。

6.食感が分かりやすく、幅広い世代が食べやすい

外側はサクサク、中はやわらかく、辛味や強い香りがなくてもおいしく仕上がります。子どもから高齢者まで受け入れられやすい味です。

7.食事にも軽食にも使える

定食のおかず、弁当、パンにはさむコロッケパン、小腹がすいたときのおやつなど、一日のさまざまな場面で食べられます。この用途の広さも定番化を支えました。

コロッケにはどんな種類がある?

種類 主な特徴 食感・味わい
ポテトコロッケ じゃがいも、ひき肉、玉ねぎ ほくほく・甘みがある
クリームコロッケ ベシャメルソース なめらか・濃厚
カニクリームコロッケ クリームにカニを加える 魚介のうま味が強い
かぼちゃコロッケ つぶしたかぼちゃ 甘く、しっとり
カレーコロッケ カレー粉やカレー味の具 香りが強く、パンにも合う
ご当地コロッケ 地域の肉・魚介・野菜など 土地ごとの特色が出る

日本で「コロッケ」といえばポテト型が基本ですが、クロケットに近いクリーム型も残り、さらに日本各地の食材を取り入れた種類へ広がっています。
外国料理を一つの型へ固定せず、地域や家庭の事情に合わせて変化させたことも、日本のコロッケ文化の特徴です。

日本で独自に発達した洋食の歴史は「オムライスはどこで生まれた?」「ナポリタンはなぜ日本生まれ?」でも解説しています。

よくある疑問

コロッケは日本料理ですか?

ルーツはフランス料理のクロケットとされていますが、じゃがいもを主材料にして白いご飯のおかずへ発達した現在のポテトコロッケは、日本独自の洋食です。

クロケットとクリームコロッケは同じですか?

完全に同じではありませんが、ベシャメルソースを使うクロケットは、日本のクリームコロッケに近い料理です。フランスや他地域のクロケットには肉・魚・野菜など多様な種類があります。

日本で最初にコロッケを作った店はどこですか?

起源や最初の提供店には諸説があり、唯一の店を確実に断定できる資料は限られています。19世紀末ごろに西洋料理として伝わり、1895年には家庭向けのポテトコロッケが紹介されていたとされています。

なぜ精肉店でコロッケを売ることが多いのですか?

ひき肉や端材を活用しやすく、店頭で揚げてすぐ販売できるためです。安価で食べごたえのある惣菜として精肉店の定番になりました。

「コロッケの唄」とは何ですか?

1917年に流行したコミックソングです。コロッケを題材にした歌が大流行したことで、料理の名前が全国へ広く知られるきっかけになったとされています。

まとめ

  • 日本のコロッケのルーツはフランス料理のクロケットとされる
  • クロケットはベシャメルソースなどを使う揚げ物
  • 日本では乳製品加工の事情などから、じゃがいもを使う形へ変化した
  • じゃがいもは成形しやすく、安価で、白いご飯にも合った
  • 「コロッケ」はフランス語のcroquetteが日本語化した名称
  • 1895年には家庭向けのポテトコロッケが紹介されていた
  • 1917年の「コロッケの唄」が全国的な知名度を高めた
  • 大正期にはとんかつ・カレーライスと並ぶ三大洋食と呼ばれた
  • 戦後は学校給食、冷凍食品、惣菜販売によってさらに普及した
  • 作りやすさ、買いやすさ、アレンジの豊富さが現在の定番化を支えている

コロッケは、フランス料理をそのまま輸入した料理ではありません。
クロケットという発想を受け取りながら、日本で使いやすいじゃがいもを主役にし、米飯に合うおかずへ作り替えた和製洋食です。
料理本、歌、給食、冷凍食品、精肉店の惣菜など、その時代の暮らしに合った形へ変わり続けたからこそ、現在も毎日の食卓で愛されています。


参考・確認先
確認済み
編集・確認:食のハッケン帳編集部
情報確認日:2026年9月1日

この記事の確認について
日本のコロッケがフランスのクロケット等の西洋料理の影響を受けつつ、じゃがいもを主材料とする日本独自の洋食へ発達したこと、1895年の家庭向け紹介や1917年の「コロッケの唄」など普及の背景を確認しています。

※起源には諸説があるため、最初の店や発明者を一人・一店へ断定せず、公的資料で確認できる普及過程を中心に記載しています。

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