柿を切ったとき、オレンジ色の果肉に黒い点や黒褐色の筋が入っていることがあります。
「カビではないか」「傷んで黒くなったのでは」「黒い部分を取れば食べられる?」と不安になる人も少なくありません。
柿の果肉に見られる黒い点の一部は、一般に「ゴマ」と呼ばれる品種特有の変化です。
農林水産省は、不完全甘柿の「禅寺丸」や「西村早生」について、熟すと果肉にゴマ状の斑点が入ると紹介しています。
農研機構によると、不完全甘柿では種からエチルアルコールやアセトアルデヒドが生じ、果肉のタンニンが凝固して渋みが抜け、さらに酸化することで黒く見えます。
ただし、柿にある黒いものがすべて正常なゴマとは限りません。
果肉がどろどろしている、酸っぱいにおいや酒のような異臭がする、白・緑・黒色のカビがある、汁が漏れている場合は食べずに処分します。
柿の果肉に散る黒い「ゴマ」は、品種によって見られるタンニン細胞の変化で、腐敗やカビではありません。
農林水産省は、西村早生や禅寺丸などの不完全甘柿で、熟すと果肉へゴマ状の斑点が入ることを特徴として紹介しています。
渋抜きでは、口の中で渋味を感じる水溶性タンニンが不溶性へ変化します。
紀の川柿などでは、その変化したタンニンが黒い点として見えることがあります。
一方、皮から果肉へ沈み込む黒い病斑、カビ、汁漏れ、異臭、どろどろした軟化は「ゴマ」とは別に判断します。

黒い点「ゴマ」はタンニンが変化したもの
柿の渋みの主な原因は、水に溶ける性質を持つタンニンです。
口の中で水溶性タンニンが溶けると、強い渋みを感じます。甘柿や渋抜きした柿では、タンニンが水に溶けない状態へ変化するため、渋みを感じにくくなります。
農研機構は、不完全甘柿で種がエチルアルコールやアセトアルデヒドを発生させ、果肉のタンニン物質が凝固して渋みが抜け、さらに酸化されて果肉が黒く見えると説明しています。
黒い点は「種の周り」に入りやすい
不完全甘柿では種子ができることで周辺の渋が抜けやすくなり、種の近くへゴマが入りやすい品種があります。
ただし、すべての品種で「種の周りだけ」が黒くなるわけではなく、品種や脱渋方法によって果肉全体へ黒点が見える場合もあります。
不完全甘柿では、種ができた周辺を中心に渋みが抜けやすく、黒いゴマ状の点も種の近くへ多く入る場合があります。
同じ柿でも、種が入っている部分と入っていない部分で、黒い点の量や甘さに差が出ることがあります。
黒い点が多いほど腐っているわけではない
ゴマ状の点は、果肉の組織が腐って黒く溶けた状態ではありません。
細かな点が果肉へ散り、果肉が硬く締まり、柿本来の甘い香りがある場合は、品種特有の変化と考えられます。
黒い点の入り方を確認する
正常なゴマは細かな点として果肉へ入ります。大きな黒いかたまり、湿った斑点、周囲の崩れを伴う場合は傷みを疑います。
不完全甘柿でゴマが入りやすい理由

柿は、甘柿と渋柿に分けられ、さらに種の有無が渋みの抜け方へ影響するかどうかで分類されます。
不完全甘柿
不完全甘柿は、種が入るとその周辺の渋みが抜け、果肉にゴマ状の黒い点が入る品種です。
農林水産省は、代表例として「禅寺丸」と「西村早生」を紹介しています。
- 禅寺丸:日本で古くから栽培されてきた甘柿で、果肉にゴマ状の斑点が入ると食べごろ
- 西村早生:熟すと果肉にゴマ状の斑点が入りやすい早生品種
完全甘柿
「富有」や「次郎」などの完全甘柿は、種がなくても成熟すると渋みが抜けます。
不完全甘柿のような黒いゴマが目立たないものも多く、果肉は均一なオレンジ色に見えます。
渋抜きした渋柿にも黒い変化が出ることがある
渋柿は、アルコールや炭酸ガスなどを使ってタンニンを不溶性へ変化させ、渋みを抜いてから流通します。
渋抜きや熟成の条件によって果肉へ褐色の点や筋が見える場合がありますが、品種と処理方法だけで安全を断定せず、硬さやにおいも確認します。
「ゴマが多い=必ず甘い」ではない
不完全甘柿ではゴマが入ることと渋が抜けることに関係がありますが、柿の甘さは品種、熟度、栽培条件などでも変わります。
黒い点の数だけで糖度を比較することはできません。
逆に、ゴマが見えない完全甘柿でも十分に甘い品種があります。
「黒点がある=甘い」「黒点がない=渋い」という見分け方は避けます。
正常なゴマと傷みをどう見分ける?

| 確認点 | 品種特有のゴマの可能性 | 傷み・カビの可能性 |
|---|---|---|
| 黒い部分の形 | 細かな点や短い筋が果肉に散る | 大きな斑点、湿ったかたまり、綿毛状の付着物 |
| 広がり方 | 種の周辺や果肉へ比較的均一に入る | 一部から不規則に広がり、周囲が崩れる |
| 果肉の硬さ | 品種本来の硬さとハリがある | どろどろ、ぶよぶよ、水っぽく崩れる |
| におい | 柿本来の甘い香り | 酸っぱいにおい、酒のような発酵臭、カビ臭 |
| 汁漏れ | 切っても異常な汁漏れがない | 皮の傷やヘタから濁った汁が漏れる |
| 判断 | 異常がなければそのまま食べられる | 食べずに処分する |
果肉が柔らかいだけなら完熟の場合もある
柿は熟すと果肉が柔らかくなり、とろりとした食感になります。
全体が均一に柔らかく、甘い香りがあり、カビ、異臭、汁漏れがなければ、完熟した状態の可能性があります。
一方、一部だけが水っぽく崩れる、皮が破れて泡や濁った汁が出る場合は腐敗を疑います。
カビがある柿は食べない
農林水産省は、カビの生えた食品は食べずに捨てるよう案内しています。
柿の表面やヘタに白、緑、青、黒色のふわふわしたカビがある場合は、見える部分だけを削らず、果実全体を処分してください。
味見で安全確認をしない
見た目やにおいに異常がある柿を、少量食べて確認するのは避けましょう。カビや腐敗が疑われる場合は処分します。
皮の黒い斑点は果肉のゴマとは別

柿の皮に付く黒い斑点には、こすれ、打撲、乾燥、病害、カビなど複数の原因があります。
浅いこすれや打撲
輸送中にほかの果実や箱へ当たり、皮の表面が黒褐色になることがあります。
黒い部分が乾いており、皮の下の果肉が硬く、異臭や汁漏れがなければ、傷部分を広めにむいて内部を確認できます。
ヘタの周辺が黒く沈んでいる
ヘタと果実の間へすき間があると、乾燥や傷みが進みやすくなることがあります。
農林水産省は、おいしい柿の目安として、ヘタと果実の間にすき間がなく、ヘタがきれいな緑色であることを挙げています。
ヘタの下が黒く柔らかい、カビがある、液がにじむ場合は食べません。
皮の黒い点が果肉まで続く場合
皮をむいても黒変が深く続き、果肉が柔らかく崩れている場合は、表面の傷だけではない可能性があります。
黒変部分の周囲まで広く確認し、少しでも異臭やぬめりがあれば処分してください。
黒い部分だけ取り除けば食べられる?
正常なゴマであれば、黒い部分を取り除く必要はありません。
見た目や食感が気になる場合は除いても構いませんが、ゴマを取り除かないと安全に食べられないわけではありません。
打撲による局所的な変色
皮の傷の直下だけが少し茶色く、周囲の果肉が硬く、異臭や汁漏れがない場合は、変色部分を広めに取り除いて食べられることがあります。
皮の黒変と果肉の状態を分けて見る例は「バナナが黒くなる理由」も参考になります。
腐敗やカビは部分除去で済ませない
黒い部分が湿っている、果肉が崩れる、異臭、カビ、汁漏れがある場合は、黒い部分だけを切って食べるのは避けます。
見えない範囲まで品質低下が広がっている可能性があるため、果実全体を処分してください。
梨でも内部の生理障害と腐敗は別です。「梨の果肉が透明・芯が茶色いのはなぜ?」で詳しく解説しています。
保存方法とおいしい柿の選び方

柿は常温で置くと熟成が進み、徐々に柔らかくなります。
農林水産省は、常温では2日ほどで柔らかくなると紹介しています。硬い食感を保ちたい場合は、熟成を遅らせる保存が必要です。
硬い柿はポリ袋へ入れて冷蔵する
皮に傷がなく、硬さを保ちたい柿は、乾燥を防ぐためポリ袋へ入れ、冷蔵庫の野菜室で保存します。
ヘタが乾くと軟化しやすくなるため、軽く湿らせて固く絞ったキッチンペーパーをヘタへ当て、ヘタを下にして置く方法もあります。
ペーパーが濡れ過ぎているとカビの原因になるため、水が滴らない程度にしてください。
柔らかくしたい柿は常温へ
まだ硬い柿を柔らかくしたい場合は、直射日光を避けた室内へ置きます。
毎日、ヘタ、皮のへこみ、汁漏れ、においを確認し、好みの柔らかさになったら冷蔵して早めに食べます。
切った柿は冷蔵して早めに食べる
切った柿は切り口へラップを密着させ、清潔な保存容器へ入れて冷蔵します。
変色や乾燥が進みやすいため、長く保存せず早めに食べ切ります。
冷凍するとシャーベットのように食べられる
完熟して柔らかくなった柿は、皮をむいて食べやすく切り、冷凍用保存袋へ入れて冷凍できます。
半解凍にすると、シャーベットのような食感で食べられます。
おいしい柿を選ぶポイント
- ヘタと果実の間にすき間がない
- ヘタがきれいな緑色をしている
- 全体が均一に色づいている
- 持ったときに重さを感じる
- 皮に張りとツヤがある
- 硬さが一部分だけ極端に違わない
- カビ、汁漏れ、深い傷がない
果肉の硬さは品種や好みによって異なります。
硬めを好む場合は張りのあるもの、柔らかい柿を好む場合は、傷みがないことを確認したうえで熟したものを選びます。
よくある疑問
柿の果肉に黒い点があっても食べられますか?
細かな黒い点が果肉へ散り、果肉にハリがあり、異臭、カビ、汁漏れがなければ、不完全甘柿に見られるゴマの可能性があります。その場合はそのまま食べられます。
黒いゴマはカビですか?
品種特有のゴマは、タンニンが凝固して酸化し、黒く見えるものです。綿毛状に盛り上がるカビとは異なります。
黒い点が多い柿は甘いですか?
不完全甘柿では、ゴマが入った部分はタンニンが不溶性へ変わり、渋みが抜けています。ただし、黒い点の量だけで柿全体の甘さを正確に判断できるわけではありません。
皮に黒い点がある柿は食べられますか?
表面の浅いこすれで、果肉が硬く、異臭や汁漏れがなければ、皮をむいて内部を確認できます。黒変が果肉まで続く、柔らかく崩れる、カビがある場合は食べません。
柔らかい柿は腐っていますか?
全体が均一に柔らかく、甘い香りがあり、カビや異臭がなければ完熟の可能性があります。一部だけがどろどろしている、汁漏れや発酵臭がある場合は腐敗を疑います。
まとめ
- 柿の果肉にある細かな黒い点は「ゴマ」の場合がある
- 不完全甘柿では、種の働きでタンニンが凝固し、酸化して黒く見える
- 禅寺丸や西村早生は、ゴマ状の斑点が入りやすい品種
- 正常なゴマは細かく散り、果肉にハリがあり、異臭や汁漏れがない
- 大きな黒変、どろどろした果肉、発酵臭、カビがあれば食べない
- 皮の黒い斑点は、こすれ、打撲、病害、腐敗など複数の原因がある
- 硬さを保つ場合は乾燥を防いで野菜室へ保存する
- 常温では熟成が進むため、好みの柔らかさになったら早めに食べる
柿を切ったときの黒い点は、見慣れないとカビのように感じますが、不完全甘柿に見られる品種特有のゴマである場合があります。
黒い点の形と広がり方だけでなく、果肉の硬さ、におい、カビ、汁漏れまで確認し、正常なゴマと傷みを区別しましょう。
参考・確認先
編集・確認:食のハッケン帳編集部
情報確認日:2026年9月1日
この記事の確認について
柿の果肉に見える黒いゴマ状斑点が、品種によってタンニン細胞の変化として現れること、不完全甘柿では種子形成と脱渋に関連してゴマが入りやすいこと、渋抜きでは可溶性タンニンが不溶化することを確認しています。
- 農林水産省「柿の種類・渋抜き・保存」
- 奈良県「植物のポリフェノール 抗ウイルス性にも注目も」
- 農林水産省「鮮度維持がもたらす安定供給」
- 農研機構「今が旬の『カキ』のお話」
- 農林水産省「甘柿と渋柿の違いについて教えてください。」
※果肉のゴマ状黒点と、皮の病斑・打撲・腐敗は別の現象です。黒い部分の形・位置・果肉の状態を合わせて判断します。












