油揚げと厚揚げは、どちらも豆腐を油で揚げた食品です。
それでも油揚げは中が空洞になりやすく、厚揚げは外側だけ香ばしく、中に豆腐らしい白い組織が残ります。
違いを作る中心は、豆腐生地の厚さ・水切り・揚げる温度と工程です。
厚生労働省確認の豆腐加工品向け手引書では、一般的な油揚げは低温と高温を使う二度揚げ、厚揚げは木綿・ソフト・絹ごし豆腐を170℃前後で揚げる食品として説明されています。
この記事では「油揚げ vs 厚揚げ」の2者比較に絞り、内部構造、食感、味の染み方、栄養、水分、油抜き、料理、保存までを一つの流れで整理します。
油揚げは薄い豆腐生地を低温→高温で揚げ、内部が広がって袋状になりやすい食品。厚揚げは厚い豆腐を高温で揚げ、表面を固めながら内部の豆腐を残す食品です。
だしや煮汁を吸わせたい料理は油揚げ、豆腐の厚みと形を残して焼く・煮る料理は厚揚げが使いやすいという違いがあります。
油抜きは必須の安全処理ではありません。油の香りを軽くしたい、調味料をなじませたいなど料理上の目的で使い分けます。
がんもどきは崩した豆腐へ具を混ぜて揚げる別の加工品なので、詳しい違いは別記事へ分けます。
油揚げと厚揚げは作り方のどこが違う?

油揚げ|低温で伸ばし、高温で表面を仕上げる
農林水産省は、油揚げを「もめん豆腐を薄く小さく切って圧搾・水切りし、低温の植物油で揚げたのち、さらに高温の植物油で揚げたもの」と説明しています。
厚生労働省確認の手引書では、一般的な製法として110℃前後の低温で「のばし工程」、160℃前後の高温で「からし工程」を行う例が示されています。
低温側では豆腐生地の水分が蒸気になりながら内部を押し広げ、たんぱく質の組織が伸びます。
その後の高温工程で表面をしっかり仕上げることで、薄く、内部に空間のある油揚げらしい構造になります。
厚揚げ|表面を揚げても中心は豆腐のまま
厚揚げは、木綿豆腐や絹ごし豆腐などを厚いまま水切りし、高温の油で揚げます。
外側は熱で水分が抜け、たんぱく質が締まって香ばしい皮になりますが、厚みがあるため中心まで油揚げのような空洞にはなりません。
農林水産省も、厚揚げを「厚めに切った豆腐を高温で一気に揚げ、内部は豆腐がそのままの形で残る」食品として紹介しています。
空洞と豆腐の厚みが食感・味の染み方を変える

油揚げは煮汁を抱え込みやすい
袋状の内部と薄い組織があるため、だしや調味液が入りやすく、きつねうどん、いなり寿司、みそ汁、煮びたしなどへ向きます。細切りにすると表面積が増え、汁物へ油のコクを広げやすくなります。
厚揚げは表面と中心の対比を楽しめる
表面を焼き直すと香ばしさが増し、中心には豆腐のやわらかさが残ります。煮物でも形が崩れにくく、煮汁を含ませながら「具」として存在感を残しやすい食品です。
迷ったら「汁を吸わせたいなら油揚げ」「豆腐の形を残したいなら厚揚げ」と考えると、2者の役割を分けやすくなります。
栄養値の違いは油だけでなく水分量も見る

100g当たりの差には「水分の少なさ」が効く
油揚げは薄く揚げて水分を大きく減らすため、同じ100gへ換算すると、豆腐由来のたんぱく質やミネラル、揚げ油由来の脂質が濃く見えます。
厚揚げは中心に豆腐の水分が残るため、100g中に占める水の割合が油揚げより大きくなります。
したがって「油揚げは100g当たりのたんぱく質が高い=1枚食べれば厚揚げ1枚より必ず多い」とは限りません。
実際に食べる一枚・一パックの重量も違うので、100g値と一食量を分けて考えます。
揚げ食品なので脂質も確認する
どちらも油を使う加工品です。煮る・焼く・油抜きをするなど調理法によって油の感じ方は変わりますが、元の食品として脂質を含む点は共通します。
「同じ大豆食品」でも濃度が違う
豆腐、油揚げ、厚揚げは大豆由来の栄養素を持ちますが、圧搾と加熱で水分が変わり、油が加わるため成分表の数値は同じになりません。加工工程そのものが食品の栄養密度を変える例です。
油抜きは必要?目的があるときに使う
油揚げ・厚揚げへ熱湯をかけたり、短時間ゆでたりする「油抜き」は、表面の油を一部落とし、油の香りを軽くしたり、煮汁をなじませやすくしたりする下処理です。
現在の商品では、油抜きをしなくてもそのまま調理できるものが多く、油抜きは必須の安全処理ではありません。
相模屋も厚揚げのレシピで「油抜きはしなくても大丈夫」と案内しつつ、行うとカリッと焼き上がる例を紹介しています。
煮物・おでん
煮汁の味をすっきりさせたい場合は、熱湯を回しかけて表面油を軽く落とします。反対に、油のコクを料理へ生かしたいみそ汁や炒め物では、そのまま使う選択もできます。
焼き厚揚げ
表面を香ばしくしたいときは、ペーパーで油や水分を軽く拭き、フライパンやトースターで焼き直すと表面が仕上がりやすくなります。
古い油臭が気になる商品を油抜きで「復活」させるものではない
商品本来とは違う酸化臭や異臭がある場合は、熱湯をかければ安全になると考えません。油抜きは料理上の調整で、傷んだ食品を元へ戻す処理ではありません。
料理ではどう使い分ける?

| 料理 | 油揚げ | 厚揚げ |
|---|---|---|
| みそ汁・汁物 | 細切りでコクを広げやすい | 大きめの具として使える |
| 煮物 | 煮汁を吸わせる | 形を残して食べごたえを出す |
| 詰め物 | 袋状を生かして具を入れられる | 厚みを生かす料理向き |
| 焼き物 | カリッと軽い食感 | 表面カリッ・中やわらか |
代用できる料理もありますが、同じ大きさへ切って置き換えても食感は同じになりません。汁をどれだけ吸わせたいか、豆腐らしい厚みを残したいかで選びます。
いなり寿司・巾着は油揚げの構造を利用した料理
油揚げを開いて中へ酢飯や餅、卵などを入れられるのは、内部の空洞があるためです。これは厚揚げでは同じように再現できません。
厚揚げは主菜のボリュームを出しやすい
大きめに切って焼く、野菜と炒める、あんをかけるなど、中心の豆腐部分を残すことで食べごたえを作れます。
豆腐そのものの違いは「木綿豆腐と絹ごし豆腐の違い」、がんもどきを含めた加工法は「がんもどきは何が違う?」へ分けています。
開封後の保存と冷凍

未開封品はパッケージに記載された保存方法と期限を守ります。
開封後は空気や器具に触れるため、表示期限まで必ず同じ品質で持つという意味ではありません。
袋や保存容器へ入れて冷蔵し、早めに使います。
すぐ使わない油揚げは、一回分へ小分けして冷凍しやすい食品です。
厚揚げも冷凍できますが、豆腐内部の水分が凍ることで解凍後にスポンジ状・粗い食感へ変わることがあります。
煮物など、その変化を生かせる料理へ回すと使いやすくなります。
酸っぱい異臭、カビ、強いぬめり、袋の異常な膨張などがある場合は、加熱すれば使えるとは考えません。
期限は商品ごとに違う
製法、包装、加熱殺菌の有無などで期限は異なります。「豆腐加工品は全部同じ日数」と固定せず、手元の商品表示を優先します。
商品によって「ふっくら」「しっかり」の仕上がりが違う
油揚げは生地の水分、凝固剤、厚さ、揚げ時間などで膨らみ方が変わり、厚揚げも木綿系・絹系で中心部の食感が変わります。
同じ名称でも、油揚げには薄く軽いタイプ、肉厚でふっくらしたタイプがあり、厚揚げにも表面が硬めのもの、やわらかな絹厚揚げがあります。料理へ使うときは名称だけでなく、厚みと触感を見ると用途を選びやすくなります。
油揚げが開きにくいこともある
いなり寿司や巾着へ使う場合、すべての油揚げが同じように袋状へ開くとは限りません。肉厚タイプや製法によっては開きにくい商品もあります。
袋詰めを目的にするなら「いなり用」「開きやすい」などの表示がある商品を選ぶか、端を少し切って菜箸を転がすように押してから開くと扱いやすくなります。
再加熱は「中まで温める」と「表面を焼く」を分ける
厚揚げをトースターやフライパンで焼く場合、表面だけ短時間で焦がすと中心が冷たいまま残ることがあります。冷蔵品は中心まで温めてから表面を香ばしく仕上げると、外側と中の食感差を楽しみやすくなります。
油揚げは薄いため短時間で温まりやすく、焼き過ぎると乾燥して硬くなりやすい点が違います。
代用するときは「量」より「役割」を置き換える
油揚げを厚揚げへ置き換える場合は、汁を吸わせる役割から、食べごたえのある具へ変わります。反対に厚揚げを油揚げへ替えると、料理全体が軽くなり、煮汁を多く含みやすくなります。
単純に同じグラム数へ置換するのではなく、「汁を吸わせる」「形を残す」「具を包む」という役割を基準に選ぶと失敗しにくくなります。
よくある疑問
油揚げと厚揚げは同じ豆腐を厚く切っただけですか?
厚さだけでなく揚げ工程も違います。油揚げは薄い生地を低温・高温で揚げて広げ、厚揚げは厚い豆腐を高温で揚げて内部を残します。
油揚げはなぜ袋のように開きますか?
薄い豆腐生地を揚げる過程で水分が蒸気となり、低温工程で組織が伸びて内部に空間ができやすいためです。
厚揚げは木綿豆腐だけですか?
木綿だけではありません。厚生労働省確認の手引書では木綿、ソフト、絹ごしなどを用いる製品が説明されています。
油抜きしないと体に悪いですか?
油抜きは必須の安全処理ではありません。表面油を軽くしたい、煮汁をなじませたいなど、料理上の目的で使い分けます。
油揚げと厚揚げのどちらが煮物向きですか?
どちらも使えます。煮汁をたっぷり吸わせたいなら油揚げ、形と豆腐の厚みを残したいなら厚揚げが向きます。
まとめ
- 油揚げは薄い豆腐生地を低温・高温で揚げ、内部が広がりやすい
- 厚揚げは厚い豆腐を高温で揚げ、中心の豆腐を残す
- 構造差によって油揚げは汁を吸い、厚揚げは形を残しやすい
- 100g当たりの栄養値は水分量の違いも見て比較する
- 油抜きは必須ではなく、料理の目的で選ぶ
- 油揚げは詰め物・汁物、厚揚げは焼き物・煮物へ使いやすい
- 開封後は商品表示を基準に冷蔵し、早めに使う
油揚げと厚揚げの違いは「薄い・厚い」だけではなく、揚げ工程によって生まれる内部構造の違いです。構造が分かると、料理の使い分けも自然に決まります。
参考・確認先
編集・確認:食のハッケン帳編集部
情報確認日:2026年9月1日
この記事の確認について
油揚げと厚揚げの製造方法について、農林水産省の豆類加工品資料と厚生労働省確認のHACCP手引書を確認しました。油揚げは低温・高温の二段階、厚揚げは厚い豆腐を高温で揚げて内部を残すという工程差を中心に整理しています。
- 農林水産省「豆類加工品」
- 農林水産省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」
- 厚生労働省確認「小規模な豆腐類製造事業者向け手引書」
- 日本豆腐協会「豆腐の原材料・作り方」
- 相模屋食料「絹厚揚げの大学いも風」
※製造温度や工程は事業者・商品によって異なります。本文の温度は業界手引書に示された一般的な製法例です。












