鶏肉を焼いたり揚げたりしたあと、中心や骨の周りに赤色・ピンク色が残っていると、「まだ生焼け?」「肉汁が赤いから危険?」と不安になります。
ただし、加熱後の鶏肉の色だけでは、生焼けかどうかを正確に判断できません。
十分に加熱された鶏肉でも、筋肉中の色素、骨髄由来の色素、冷凍、燻製・グリルなどの条件によってピンク色が残ることがあります。
反対に、見た目が白くなっていても、安全な温度と時間へ達したことを外観だけで証明することはできません。
鶏肉が加熱後も少し赤い・ピンク色だからといって、必ず生焼けとは限りません。安全性は「色」ではなく、中心温度と加熱時間を基準に確認します。
家庭で分かりやすい基準は、厚生労働省・農林水産省が案内する中心部75℃で1分間以上です。
食品安全委員会は、低温調理では63℃なら中心が63℃へ達してから30分、70℃なら3分、75℃なら1分の維持が必要と説明しており、設定温度へ達するまでの時間は別に必要です。
「中心が白い」「肉汁が透明」「弾力がある」といった見た目は補助情報にはなっても、安全な加熱の証明にはなりません。
判断に迷う場合は味見せず、中心まで追加加熱するか、調理用温度計で確認してください。
鶏肉が十分に加熱されてもピンク色になることがある理由
鶏肉の色は、温度だけで決まるものではありません。
肉に含まれる色素の状態、鶏の年齢、骨の状態、冷凍履歴、煙や調味条件などによって、十分に加熱したあとも赤色・ピンク色が残る場合があります。

ミオグロビンなどの色素が見え方へ影響する
鶏肉の赤・ピンク色には、筋肉中で酸素を保持するミオグロビンなどの色素が関係します。
USDA FSISは、加熱済みの家禽肉でも白・ピンク・褐色などさまざまな色になり得るため、色は安全な加熱状態を判断する確実な指標ではないとしています。
加熱で色素のたんぱく質部分は変性しますが、肉のpH、酸化状態、加熱方法などによって最終的な色は一定になりません。
そのため「ピンク色が少しでもあれば生」「完全に白なら安全」という二択にはできません。
煙や燃焼ガスでピンク色が残ることがある
USDA FSISは、グリルや燻製した家禽肉では、安全な内部温度へ達していてもピンク色が残る場合があると説明しています。
燻製では表面近くにピンク色の帯が見えることもあります。
また、加熱機器内の燃焼ガスが肉中のヘモグロビンなどと反応し、ピンク色を生じることがあるとされています。
特に若い鶏では皮が薄く、この影響が見えやすい場合があります。
亜硝酸塩などでもピンク色が残ることがある
USDA FSISは、保存料として使われる硝酸塩・亜硝酸塩や、飼料・水などに由来する成分も、加熱後の家禽肉がピンク色に見える一因になり得るとしています。
加工肉・味付け肉では、調味料自体の色も加わります。
したがって、完成後の色だけから加熱不足かどうかを逆算するのは困難です。
骨の周りが赤い・黒っぽいのは、生焼けとは限らない
手羽元、骨付きもも肉、フライドチキンなどでは、肉の中心よりも骨のすぐ周囲だけ赤・紫・黒褐色に見えることがあります。

若い鶏では骨髄色素が周囲へ出やすい
若い鶏では骨が完全に硬化しておらず、骨髄に含まれる色素が骨の周囲へ移って見えることがあります。
加熱によってその色が赤褐色・暗褐色へ変化すると、「血が残っている」「中が生」と感じやすくなります。
冷凍後の骨付き肉では目立つことがある
冷凍によって骨や周囲組織が変化すると、解凍・加熱時に骨髄由来の色素が周りへ見えやすくなる場合があります。
骨に沿って局所的に赤い場合は、この影響も候補になります。
ただし、「骨の近くだから赤くても安全」と決めつけることはできません。
骨付き肉は厚みがあり加熱むらも起こりやすいため、色の理由とは別に中心温度を確認します。
生焼けか迷ったら、中心温度と時間を確認する
鶏肉はカンピロバクターなどの食中毒菌に汚染されている可能性があります。
厚生労働省は、家庭でのカンピロバクター食中毒予防として中心部を75℃以上で1分間以上加熱することを重要な対策として示しています。

家庭で覚えやすい基準は「75℃で1分」
農林水産省も、鶏肉は中心温度75℃以上で1分以上しっかり加熱するよう案内しています。
中心が白くなることは目安として示されていますが、食品安全委員会の低温調理試験では、安全条件を満たす前後で外観を見分けられない例が確認されています。
そのため、特に厚い鶏むね肉、骨付き肉、大きな唐揚げ、低温調理では、見た目より温度管理を優先します。
75℃以外にも「同等の加熱条件」がある
厚生労働省は、75℃1分と同等の加熱殺菌条件として、70℃3分、69℃4分、68℃5分、67℃8分、66℃11分、65℃15分などを示しています。
食品安全委員会は家庭での低温調理について、63℃なら肉の内部が63℃へ達してからさらに30分維持する例を示しています。
ここで重要なのは、調理器の設定温度へ入れた時点から30分ではないことです。
低温調理は自己流で時間を短縮しないでください。
肉の大きさ・厚さ・初期温度によって、中心が設定温度へ達するまでの時間は大きく変わります。
安全性が検証されたレシピと機器を使い、中心温度が目標温度へ達してから必要時間を維持します。
調理用温度計は「一番冷たい場所」を探すつもりで使う
温度計は、肉の表面やフライパンの温度ではなく、最も熱が届きにくい内部を測るために使います。
最も厚い部分の中心へ差す
鶏むね肉や鶏もも肉では、最も厚い部分へ温度計の感温部が入るように差します。
薄い切り身や唐揚げでは、上から垂直に差すより側面から中心へ向けて差すほうが測りやすい場合があります。
骨・天板・フライパンへ触れさせない
骨や金属へ温度計が触れると、肉そのものの中心温度と異なる値を示す可能性があります。
骨付き肉では骨を避け、肉の厚い部分を複数箇所測ると加熱むらを見つけやすくなります。
一か所が75℃でも、全体が同じとは限らない
厚さが不均一な肉、巻いた肉、詰め物入りの料理、電子レンジ調理などは温度差が生じやすくなります。
一番高い温度を探すのではなく、一番低そうな場所でも基準へ達しているかを見るのがポイントです。
「白い・肉汁が透明・弾力がある」は安全確認の代わりにならない
家庭では「肉汁が透明なら火が通った」「中心が白ければ大丈夫」と言われることがあります。
これらは調理状態を見る参考にはなりますが、安全な加熱を証明する方法ではありません。
ピンク色でも安全温度へ達していることがある
USDA FSISは、適切に加熱された家禽肉でもピンク色になることがあるとしています。
つまり、ピンク色だけを理由に「必ず危険」とは判定できません。
白く見えても安全時間へ達したとは限らない
食品安全委員会の低温調理試験では、中心が目標温度へ到達した直後の鶏むね肉と、そこから必要時間を維持した鶏むね肉で、外観・断面から安全性を区別できませんでした。
色が安全性と一致しないのは、「赤いのに加熱済み」の場合だけではありません。「白いのに必要な時間が足りない」場合もあることが重要です。
赤い肉汁・透明な肉汁も決定打ではない
肉汁には水分、たんぱく質、筋肉や骨髄由来の色素などが含まれます。
赤みがあるから必ず生焼け、透明だから必ず安全とは判断できません。
赤い汁の見え方については、肉から出る液体そのものの仕組みを解説した「牛肉の赤い汁は血?ドリップの正体」も参考になります。
加熱むら・追加加熱・保存のポイント

1. 厚さをそろえる
厚い鶏むね肉やもも肉は、観音開きにする、厚い部分を開く、同じ大きさへ切るなどして厚さの差を小さくします。
大きさがそろうと、表面だけ焦げて中心が冷たい状態を防ぎやすくなります。
2. 表面の焼き色だけで終了しない
強火で表面を焼くと短時間で香ばしい色が付きますが、中心温度とは別です。
焼き色を付けた後は火力を調整し、ふたを使うなどして内部へ熱を伝えます。
3. 唐揚げは大きさをそろえる
大きな塊と小さな塊を同時に揚げると、小さいものが先に乾き、大きいものは中心が加熱不足になりやすくなります。
一個ずつの厚さをそろえ、最も大きいものの中心を確認すると管理しやすくなります。
4. 電子レンジは位置を変えて加熱むらを減らす
電子レンジでは、肉の形・配置・容器によって温度差が生じます。
途中で位置を変える、重なりをなくす、加熱後の温度を複数箇所で確認するなどして、冷たい部分を残さないようにします。
鶏肉を扱うときは、加熱だけでなく二次汚染にも注意が必要です。
生の鶏肉を水で洗わない理由は「鶏肉を洗ってはいけない理由|食中毒を防ぐ」で詳しく解説しています。
赤みが残って不安なときは、味見せず追加加熱する
調理温度・時間を確認できておらず、切った鶏肉に赤みが残っていて不安な場合は、色の原因を推測して食べ進めるより、追加加熱するほうが確実です。
フライパンなら切り分けて内部へ熱を通す
厚い肉は食べやすい大きさへ切り、ふたをして弱~中火で加熱します。
外側がすでに濃く焼けている場合は、強火を続けず中心へ熱を通します。
電子レンジなら短時間ずつ追加する
耐熱皿へ重ならないよう並べ、途中で位置を変えながら追加加熱します。
中心の冷たい部分が残らないようにし、可能なら温度計で確認します。
食べて確認しない
カンピロバクターなどは、味・におい・見た目から存在を判定できません。
「一口だけ食べて大丈夫そうなら続ける」という確認方法は避けます。
保存・解凍・二次汚染も食中毒予防の一部

生肉の汁をほかの食品へ付けない
生の鶏肉は袋や容器へ入れ、ドリップがほかの食品へ付かないよう保存します。
特にそのまま食べる野菜や果物とは接触させません。
鶏肉は洗わない
農林水産省は、生の鶏肉を水で洗うと、はねた水と一緒に食中毒菌がシンクや周囲へ広がる可能性があるため、洗わないよう案内しています。
ドリップが気になるときはキッチンペーパーなどで拭き取り、すぐ処分します。
解凍は冷蔵庫や適切な電子レンジ解凍で
厚生労働省は、冷凍食品などの解凍は冷蔵庫内や電子レンジで行う方法を案内しています。
室温へ長時間放置せず、解凍後は速やかに調理します。
よくある疑問
鶏肉がピンク色なら必ず生焼けですか?
必ずしも生焼けではありません。
筋肉中の色素、骨髄由来の色素、煙や調理条件などによって、安全な温度へ達したあともピンク色が残る場合があります。色ではなく中心温度と時間を確認してください。
骨の周りだけ赤いフライドチキンは食べられますか?
骨髄由来の色素が周囲へ移って赤く見える場合があります。
ただし「骨の近くだから安全」とは判断せず、最も熱が通りにくい肉の中心が必要な温度と時間へ達しているか確認します。
肉汁が透明なら火が通っていますか?
透明な肉汁は調理状態を見る参考にはなりますが、安全性の証明にはなりません。
色や肉汁より、調理用温度計で中心温度を確認する方法が確実です。
低温調理ならピンク色でも大丈夫ですか?
色では判断できません。
食品安全委員会は、家庭での例として中心63℃なら到達後30分、70℃なら3分、75℃なら1分の維持を示しています。設定温度へ入れた直後から数えるのではなく、肉の内部がその温度へ達してから必要時間を維持します。
唐揚げを半分に切って赤かったらどうすればいいですか?
安全な加熱条件を確認できていない場合は、食べるのを止めて追加加熱してください。
半分に切った状態なら内部へ熱が入りやすくなります。味見ではなく、可能なら中心温度で確認します。
まとめ
加熱した鶏肉の赤・ピンク色は、生焼けだけでなく、ミオグロビンなどの色素、骨髄由来の色素、煙・燃焼ガス、加工・調味条件などでも起こります。
最も重要なのは、「ピンクか白か」で安全性を決めないことです。
家庭では中心部75℃で1分間以上を分かりやすい基準とし、低温調理では安全性が確認された温度と時間を守ります。
反対に、白くなった肉や透明な肉汁も、それだけで十分な加熱を証明するものではありません。
特に厚い肉・骨付き肉・低温調理・電子レンジ調理では、最も熱が通りにくい部分を温度計で確認すると安全性を高められます。
生の鶏肉は洗わず、調理器具・手・ドリップからほかの食品への二次汚染も防ぎましょう。
参考・確認先
編集・確認:食のハッケン帳編集部
情報確認日:2026年9月1日
この記事の確認について
鶏肉のカンピロバクター対策、中心温度75℃1分、同等の温度・時間条件、低温調理での中心到達時間、加熱後もピンク色が残る理由、肉色を安全性判定へ使えないこと、生肉を洗わない二次汚染対策について、厚生労働省・農林水産省・食品安全委員会・USDA FSISの公開情報を照合して構成しています。
- 厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」
- 厚生労働省「食肉の加熱条件に関するQ&A」
- 農林水産省「鶏料理を楽しむために~カンピロバクターによる食中毒にご注意を!!~」
- 食品安全委員会「肉を低温で安全においしく調理するコツをお教えします!」
- USDA FSIS「Why is some cooked poultry pink?」
- USDA FSIS「If smoked poultry is pink, is it safe?」
- USDA FSIS「To what internal temperature should I cook poultry?」
- USDA FSIS「Can you tell if meat is safely done by its color?」
※日本国内の家庭調理では、厚生労働省・農林水産省が示す「中心部75℃で1分間以上」を基本の目安としています。低温調理では、肉の中心が設定温度へ到達するまでの昇温時間と、その後の保持時間を分けて考える必要があります。












